2年前、日経マネーでも紹介されていた節税法です。
以前に軽く触れた内容ですが、おさらいです。
私の会社では退職するとき、会社の退職金制度と確定拠出年金の両方がもらえます。
両方とも一時金でもらう場合、同じ年にもらった場合と、ずらしてもらった場合のどちらが得かを試算します。
【前提条件】
勤続年数38年、退職金25百万円、確定拠出年金3百万円(9年nヶ月加入)とします。
退職金と確定拠出年金を同じ年にもらう場合
勤続年数が20年を超える場合の退職所得控除額は
800万+(勤続年数-20)×70万円=2,060万円です。
課税退職所得金額は(2,800-2,060)×0.5=370万円になります。
課税退職所得金額が370万円の時、所得税率は20%が適用され、所得税は319,062円になります。(復興特別所得税2.1%)
勤続年数 | 38 |
退職金① | 25,000,000 |
確定拠出年金② | 3,000,000 |
退職所得計(①+②) | 28,000,000 |
退職所得控除 | 20,600,000 |
課税退職所得金額 | 3,700,000 |
所得税率 | 20% |
所得税 | 319,062 |
住民税(市民税) | 222,000 |
住民税(県民税) | 148,000 |
税合計 | 689,062 |
退職金手取 | 27,310,938 |
退職金と確定拠出年金をずらした場合
確定拠出年金をもらうのを1年ずらした場合、税計算は以下のようになります。
退職金にかかる税金(1年目)
退職所得控除額は上と同じく、2,060万円です。
確定拠出年金を翌年にずらしたため、課税対象額は(2,500-2,060)×0.5=220万円に減り、所得税の税率が10%に下がります。
この結果、1年目の所得税は125,072円になります。
勤続年数 | 38 |
退職金① | 25,000,000 |
確定拠出年金② | |
退職所得計(①+②) | 25,000,000 |
退職所得控除 | 20,600,000 |
課税退職所得金額 | 2,200,000 |
所得税率 | 10% |
所得税 | 125,072 |
住民税(市民税) | 132,000 |
住民税(県民税) | 88,000 |
税合計 | 345,072 |
退職金手取 | 24,654,928 |
確定拠出年金にかかる税金(翌年)
翌年、確定拠出金を一時金で受け取った場合の税計算は以下のようになります。
前年に退職所得控除枠を使っていますが、重複期間の退職所得控除を調整した結果、最低限の80万円の退職所得控除が使えます。
DCの勤続年数:9年nヶ月→10年(端数切り上げ)
DCの退職所得控除:40万円×10年=400万円・・・①
重複期間の勤続年数:9年nヶ月→9年(端数切捨て)
重複期間の退職所得控除:40万円×9年=360万円・・・②
利用可能な退職所得控除:①ー②=400-360=40万円 ➡ 80万円未満の場合は80万円
課税退職所得金額は(300-80)×0.5=110万円、所得税率はわずか5%になり、所得税額は56,155円になります。
No.2732 退職手当等に対する源泉徴収 |源泉所得税|国税庁
勤続年数 | 38 |
退職金① | |
確定拠出年金② | 3,000,000 |
退職所得計(①+②) | 3,000,000 |
退職所得控除 | 800,000 |
課税退職所得金額 | 1,100,000 |
所得税率 | 5% |
所得税 | 56,155 |
住民税(市民税) | 66,000 |
住民税(県民税) | 44,000 |
税合計 | 166,155 |
退職金手取 | 2,833,845 |
1年目の所得税と2年目の所得税を合計すると125,072円+56,155円=181,227円となり、退職金と確定拠出年金を同時にもらう場合の319,062円よりも137,835円も所得税を抑えることができます。
まとめ
退職金にかかる所得税は、課税対象所得が多ければ高い税率が適用される累進課税です。
従って、受取時期を分散させて課税対象所得を減らせば、低い所得税率が適用されて所得税を抑えられる場合があります。
さらに、前年以前に退職所得控除を使い切っていても、退職所得控除は0円ではなく最低80万円使えます。
退職金の受取時期は退職する年からずらせないけれど、確定拠出年金は60歳から後ろにずらすことができるので、退職金と確定拠出年金の両方を一時金でもらうつもりなら、受取時期をずらしたほうが節税できる可能性が高いです。
この条件に合うのは、退職金が多くて退職金だけで退職所得控除を使い切ってしまう大企業の人が多いと思います。
ずらしても同じ所得税率になる場合には節税効果はありません。